岩通のロジックアナライザ修理記録はこれで最終回。
大画面&カラー化です。

IWATSU Logic Analyzer SL-46xxシリーズでは型番末尾の数字が0だとモノクロCRT搭載、1だとカラーCRT搭載のようです。しかしモノクロ機でも本体後部にある外部モニター用のコネクタにはRGB信号が来ています。
今となっては誰も手を出さないような14インチのLCDモニタでオシロが大画面に。これで扱いが楽になりました。

以下は写真にある三菱の古いTFTに画を出すまでの記録。
電源を直していた時から気になっていたデジタルRGBコネクタ。ただ
DINの8Pというのがイヤ~な予感。
修理を終え、コネクタに来ている信号のタイミングを測りました。
これは正論理のドット(ビデオ)信号のような感じ?。レベルはTTL(トーテムポール)みたい。
コネクタには同一レベルでタイミングが異なる3本が来ています。

これはもう波形からも水平同期信号に決まっています。周波数は24KHz・・・。

56Hzは間違いなく垂直同期でしょう。

では結果を恐れず計算。
● 水平(横) 24.8KHz=0.04mS
● 垂直(縦) 56.4Hz=17.7mS
● 17.7÷0.04=442.5 垂直同期間に収まる総水平ライン(同期)数。この時点でVGA=縦480ドットはありえない。
ってことはPC9801準拠の400ライン?。
PC-9801のディスプレイタイミングをググって調べると垂直のフロント&バックポーチ(画面内ディスプレイ領域外の期間)が上下で32ライン、垂直同期の巾が8ライン。
先ほどの総ライン数442.5から32を引いて8を引くと402.5≒400ライン(2.5は数値を丸めた際に出た誤差)。
確かにDINの8PコネクタもPC-9801と同じようなピン配置になっています。
このロジアナオシロ、大画面化には水平24KHz400ライン対応のモニターが必要?。嫌な予感的中?。
手許にあるLCDモニターは古い物でもVGA=640×480・水平30KHz以上に対応の物だけ。
98で液晶モニター?。そういえば以前ローカルがPC-9801に三菱のTFTを繋いでログをつけてたっけと、ネット上で古いプレスリリースを検索、水平24KHz対応と記されている機種がある事を確認できました。
そして今回は激安のRDT141Xを調達。

現物が到着。例によって送料の方が高い。人が見たら処分するのにお金がかかるようなガラクタばかりを買っているように見えるでしょうが、まあ、賭け事キライ、酒は一滴も飲まずなので周囲にはなんとか許されています。
まずロジアナのPC-9801準拠らしきデジタルRGBをモニタ側のアナログRGBに変換しなければなりません。
デジタルRGBのTTL出力から数百Ωの抵抗を介し75Ω入力のアナログRGBモニターに接続した例を見かけましたが、本来、75Ωという重い負荷はTTL入力用のTTL出力ではドライブできないはず(変な日本語?)。
一見してTTLトーテムポール出力3.5V程度をアナログRGBのVin-maxである0.7Vに下げるのは容易に思えるかも知れませんが、実際には75Ωの抵抗に0.7Vの電圧を振らせる為に約10mA必要であり、TTLのHレベルにそんな電流は求められません。
また考慮すべきは振幅(電圧)だけでなく75Ωという伝送路のインピーダンスで、マッチングが取れていなければ信号が歪む(エネルギーが出力段に帰る)など、ロクな事はありません(無線機ですと汚い電波を撒き散らしたり、ファイナルのデバイスを傷めたりします)。
電圧を揃える為、出力から直列に挿入した抵抗の値を調整してしまうとインピーダンスの整合は破綻します。
下の写真はデジタルRGB出力から150Ω程度の抵抗を介しアナログRGBモニターに接続した際の送り側(デジタルRGB出力)の波形です(下側の細かい破線がGND)。
送り側インピーダンス>150Ω、受け側インピーダンス=75Ω。明らかにミスマッチング。
さらに開放で3.7Vあった信号が過負荷で抑圧され、アンダーシュート(左下)のようなGND以下のレベルが発生しています。
送り側/受け側ともデバイスと回路設計上の保護回路により大抵は何てこと無いで済みますが、想定外の振幅です。

まあ、一般的にはモニターケーブルはさほど長くありませんし、個人使用レベルで問題が発生せず、結果的に動けばそれで良しとしても構わないとは思います。波形が歪んだところでデジタルの1値ですし、モニター側にも波形整形やタイミング補正があり、最終的には綺麗に映ってしまう事の方が多いかも。しかしバッファ機能のない(抵抗だけの)デジタルRGB→アナログRGB接続ケーブルが製品として大々的に流通しなかったのは上記の理由もあるのではないかと思います。
オヤジくさいヘリクツはこの辺でやめて・・・。
でもやっぱり今回は自身の理屈を貫き、デジタルRBG→アナログRGB変換用のバッファを組みました。
いわゆる普通のビデオ回路など、伝送路を介した送り側と受け側の回路内で扱う信号のレベル(電圧)が等しい場合(DVDプレーヤーの回路中で扱うビデオ信号=1V、テレビの中の回路で扱うビデオ信号も1Vの時など)、送り側には+6dB(2倍)のアンプと75Ωをドライブするバッファが必要になりますが、幸いにも今回は3V以上あるTTLレベルを1.4V(※)に落とす事になるのでRGBのバッファに2SC1815を各1個で済ませました。
※75Ω入力のモニタに接続した時点でインピーダンス整合により-6dB(=半分に落ちて0.7V)。
ちなみに2SC1815は新規設計非推奨と言う事らしいです(オヤジが趣味で遊ぶ分には手元にある限り問題無し)。

ここから先は間抜けな話です。
作り始める前も、出来上がってロジアナのデジタルRGBに繋ぐ時も、ただデジタルRGBの丸いDIN 8Pだけが気になり、他の部分に目は届がず。
(手許に8PのDINプラグが無く、秋葉に行くかハードオフのジャンクを漁るかと、そればかりを考えていました。)

実験なので直接ハンダ付けして引っ張る事にしました。
普通は裏まで見たなら、もう少し周囲にも目を向けると思いますが・・・。

直結配線を終え、ふと本体下のコネクタを見たら、
もしかしてコレ、アナログRGB?PC-9801後期にあったアナログRGBと見事にコンパチなコネクタでした(一部の信号は省略されている)。

最初っから気付いていれば純正装備の98準拠アナログRGBをアナログVGAに組み替えるだけでした。

自作バッファとの動作比較もできるし、気を取り直して接続実験を開始。
まず手持ちのVGAモニタ(富士通製)ですが、やはりというか特に隠れ機能も無く、自作のバッファ経由・岩通純正の98準拠アナログRGBとも非対応で写らず。
しかし三菱のRDT141Xでは24KHz、640×400をしっかり認識しました。
画素数が整数倍ではありませんがフル画面にズームしてもさほど違和感は無く、当然ですが表示位置などの微調整機能も搭載されています。描画は小さくなりますがD-by-Dも可能だし、古い割にはイイ感じ。
(将来、遺跡から9801を発掘した時の為にも三菱の古いTFTは持っていた方が良いかも知れません。)

レクロイの現行よかデカイ画面じゃん、、写真を撮りつつ設定を変えたりカーソル動かしたり、つい本体弄りに夢中になって自作バッファと純正アナログRGBで写真の区別ができなくなってしまいました。
上の写真はおそらくデジタルRGB→自作バッファのものだと思いますが、実際のところ純正アナログRGBを使った時との差を感じる事はありませんでした。
ちなみにデジタルRGBを150Ωの抵抗だけでアナログVGAに繋いだ際の画が下です。
ちょっと酷い映りですがモニター側のコントラストを調整すれば上の写真に近くする事が可能でした。

ここまでやって、ロジアナ側のデジタルRGB出力/アナログRGB出力の各コネクタが映像信号および同期信号においてNECのかつての国民機、PC-9801準拠である事は確認できました。3本ある映像信号(色の配置)もおそらくこれで合っていると思いますので表にまとめておきます。