アイリスオーヤマ製 除湿機 EJC-65 efeel の修理記録です。
【コンプレッサーの動作音はするが風が出ない】という動作不良のジャンクを落札。

かび止めLはサイズ比較用で修理とは関係ありません。今日まで同型で現象が異なる2台のジャンクを修理し実戦投入中、かなり優秀です。
現行機種は若干デザインが変りEJC-65Nという型番になっているようですが新品を買ったとしても満足できる製品だと思います。
音は松下のデシカントより大きめ。コンプレッサーの振動と音がどうしても出てしまいます(水が溜まってくるとその重さで筐体の振動が減少して静かになる)。排熱もデシカント程ではないにせよ出ます(風に含まれる熱とコンプレッサーの発熱)。
肝心の除湿は湿度70%以上ある7帖程度の部屋を閉め切り、中央に置いた本機のモードを【強風】・【連続】に設定。最初の半日で2回ほどタンク満水。その後は満水までの時間がやや延びますが水は溜まり続けます。24時間連続運転後、部屋の湿度は50%を切りました。2日後は40%前半(ダイソーの湿度計)。
デシカントと同程度に働き低消費電力、室内の温度上昇もデシカントより低め。
特に夏場はコンプレッサー式の方が有利かもしれません。
8月からは就寝時や買い物へ出る時は電源を切り、一日10~16時間程度の稼動ですが室内の湿度は40%前半を維持。
(仮設の機械置き場をドライルームとするのが目的で快適性(静粛)や省エネは考慮せず、使用時は強風・連続運転に設定しています)
以下、修理記録にはかなり汚い写真がありますので潔癖な人はご注意ください。
●家族や同居人に乳幼児やアレルギー体質・呼吸器疾患をお持ちの方が居る場合、この辺の空調機器は新品を買うべきであることがご理解頂けると思います。
私も初分解の時はその汚さに手が止まりかけました(もう慣れました)。
●趣味で修理を楽しめる方なら楽しい作業のはずです。しかし分解方法と共に「工具と部品が揃えば私にも直せますか?」と尋ねてこられたなら「無理でしょう」と答える事になると思います。ということで分解方法の記述は割愛します。
■分解・点検■この面で吸い寄せた空気を上部から吐き出しています。
ポイントクーラー機能は持っていないので空気の流れは一経路のみ。
この気流がそこそこに強いようでフィルターのある本来の吸気エリア以外、筐体の合わせ目などにも吸気が流れ(漏れ)、湿気を含んだ埃がそこに吸い寄せられ付着しています。

仕方の無い事ですが機器の排水口はフィルターを通過した埃とカビのような汚れが付着します。
左側、網の右に見える小さな緑色の基板は湿度センサーの載った基板。

フィルターを通過してしまった埃。体が痒くなりそう。
この場所に停滞しなければこの埃が部屋に舞う事も考えられます。
(特に起動直後の乾いた状態の時が怖い…)

反対側。
ファンモーターの下がコンプレッサーと電源基板。
コンプレッサーの右上、斜めの白い箱はモーター用のコンデンサーが収められたケース。
右はスイッチとCPUが載った基板。

沈黙のファンモーター(スティーブン・セガール/藤谷文子パパ)。
中国製、型番検索ヒットせず。
モーターに燃えたような形跡は無し。沈黙の理由は制御系かもしれないし。

知らない人んちのホコリ。この後、耐えられず風呂場で作業。

コンデンサー側は想像以上に綺麗。

しかし我慢できずに分解。
ファン他、主な構成を組み付けているのが黒いプラスチック製のパネル、それを下から支えているのが白いプラスチック。

今回の個体は埃の付着が激しいものの、喫煙環境下での使用歴はない模様。ブラシと霧吹きによる掃除だけで済ませました。アイリスオーヤマ製2台の後に手に入れたコロナはタバコの吸煙機なみで思わず水洗い。
コンデンサー/エバポレーターは単に重ねて黒いプラスチックに組み付けられています。これらを展開してファンをもう一つ用意すればクーラーの自作が叶います。

電源基板。
制御のロジック回路用に5V、リレーの電源用に12Vをスイッチングレギュレターで生成。これらは電源スイッチのON/OFFに関わらず常時供給。
3個あるリレーは全てAC100Vを切っています。①コンプレッサー、②ファンモーター、③ファンモーターのコイル切換(回転速度変更)。
ちなみにこの基板は全部健全。
この機種の場合、ファンに加えコンプレッサーも動かない故障の方が修理は楽かも。
→12Vがぶっ飛ぶとリレーが駆動できずモーターは両方とも回らない。
→12Vが出るように修理すれば直る
→電源基板、みんなが大好きなナニの交換作業で修理完了
(2号機の修理記は後日)

スイッチ/LEDと制御回路が載った基板。OTP-ROM内蔵のMPUも搭載。
十中八九でファンモーターが回らない原因はこの基板ではない。
今は家電の制御システムの解析より除湿が先。適当に眺めて掃除を続行。

空気の流れを起こしている機械なのでどうしても埃の吸い込み・堆積が目立ちます。
汚いけどこれが中古空調機器の現実でしょう。

吸気部近辺に設置されていた湿度センサー。湿気で錆が出ていますが各部導通は確認。
裏側に載っているのはバッファかレベルコンバーターかと思いきや、A/D、D/A内蔵の8Bit MPU。
ということでこの除湿機はデュアルCPU機。

■故障箇所の切り分け■さて、不良(故障)の切り分けです。
●電源は5V/12V共に正常、シスコンも正常(各スイッチ反応、インジケーター点灯)、コンプレッサーも動作音が確認できますがどうにもファンモーターだけが回らない。
●電源基板上、ファンモーターに繋がるコネクタからパターンを追うと3Pのうち中央はACに、左右はリレーでどちらがが選ばれるようになっています。
要するにセンターがコモンで左右がコイルA/B。テスターを当てるとセンターと左右のいずれかにAC100Vが現れ、それは風量の強弱で決まるようです。
おかしいのはモーターじゃん。
本来は3本のケーブル間全てに導通があるはずが中央から左右は両方とも無限大。切れてるジャン!。

ファン(黒くてもシロッコ)とモーターの取り付けは逆ネジのナットのみ。後はハウジングに見えるビスを外せばモーターが取り出せます。
ここまでバラしたらファンとハウジングは水洗い。

周囲のビスを外しモーターの殻割り。
下の写真で「あーあー、コレコレ」と見当が付いた方もいらっしゃるはずです。
一見して燃えたような跡は無し。見えない所でコイルが焼き切れたのでなければ、原因は耐熱チューブとコイルの間に挟まっている温度ヒューズ。

雑な作りにも見えますが電線はおそらくULクリアの耐熱被覆、チューブはもちろん耐熱ガラスチューブ、保安部品として温度ヒューズ実装、ということで安全基準はクリアしているはずです。ケーブル生やすよりコネクタかハンダ端子なんかを使った方がスマートですがこんな所は誰も見ないし。
それより何より、こんな温度ヒューズが手に入るのか不安。
春にモニタを直した際も思いましたが、今が80年代なら100本買うのを覚悟で東名電子産業…。

やはり温度ヒューズが切れていました。
連続稼動でモーターが過熱したか、グリス劣化で回転が重くなったローターを回しきれず(特に起動時)過電流で切れたかのいずれだとは思いますが、保安部品が作用した際はその原因究明を行ってから修理をするべきで、それを省略してしまうと次の重大事故を招く可能性も出てきてしまいます。
まあ、コレは修理しても壊して捨てるまで自分で使う物だし自己責任は承知。

RH115-2 115℃ 2A 250V PSEマーク付
型番検索で仕様判明。

さてここで交換部品の手配。
おそらく単価数円の部品なれど売ってる所を探すのが大変。ヤンチャな方法としてはジャンパー飛ばす事も考えましたがあまりにも危険な気がするのでそれは却下。
結局今回も中国の部品屋を利用するのかなあと思いつつ、せめて適当な代替品でもあればそれを受け入れるつもりでaitendoや秋月のサイト内を検索。無い。マルツや大阪系の店にも無い。国際ラジオは店も無い。
温度ヒューズは電器店、ホムセン系の方が品揃え豊富のようです。しかし温度が合っても電流が10Aとか。もう一本ヒューズ追加する手もあるけど面倒。
ダメモトでamazonを検索。えっ、あるじゃん!。

東京より+1日要するもすぐに到着。プライムなので送料無料。
10本で535円。

回転が重いようなのでヒューズ交換前にローターを抜いて点検。
軸受けはメタル軸受け、シャフト/軸受けに傷や焼き付きは無い模様。グリスの劣化と塵の混入は有。
カーラーの種類と順番は写真の通り(薄い方は複数枚が重なっている場合も有)。

■修理■自分が持っている道具を使って温度ヒューズを交換するだけ。
作業は前後しますがヒューズ交換後、モーターの組み戻し前にシャフトと軸受けをグリスアップ。
何を塗れば良いのか悩んだ末、タミヤのRC用デフグリスを使用。

ヒューズの配線は脚が長ければ放熱クリップ(大昔のラジオ雑誌の製作記事、ゲルマニウムダイオードとかハンダ付けする際の注意書きに登場するヤツ)を使えばハンダ付けできないことも無いと思います。
今回はコネクタの圧着コンタクトを利用してみました。
AMP製のコンタクト。PCのFDD用電源ケーブルに付いているコネクタの物と同一。

本物の圧着工具です。AMP純正。
対応コンタクトは1種類のみ。対応ケーブルの範囲も指定されています。それ以外なら同社の別の工具を用意しろという事ですが、対応コンタクトとケーブルを使う限り、圧着はガッチリ決まります。
今はどうだか知りませんが購入当時はメッチャ高価(¥5万弱)。

こんな使い方は想定されていないので工具に叱られそうです。
コネクタのコンタクト部分は切り落とすとして、コンタクトのケーブル圧着部分でヒューズの脚とケーブルを抱き合わせます。

毛羽立って見えるのはケーブルがやや長すぎた為。ヒューズの脚はケーブルの被覆直前まで入り込んでいます。引っ張ってもビクともしないのでこれで行く事にします。

導通回復確認。

温度ヒューズの作用点が115℃なのでさほど神経質になる必要もなさそうですが配線には熱収縮チューブ、耐熱被覆ケーブル(壊れたPC電源のケーブル)を使用。インシュロックも交換しましたがその温度内なら問題無いでしょう。

修理と洗浄を終えて組み戻し。
この機種の満水センサーはリードスイッチ。
タンク側に設けられたフロートに磁石があり、それで満水を検知しています。
私が買った松下のデシカント式(万年満水状態のジャンクを購入)はホールセンサー(ホール素子+デジタル出力)でした。こちらの修理記はまた後日に。

装置の下っ腹あたりが暖かくなります(コンプレッサーの位置)。
振動が激しいようならコンプレッサーを支えている防振ゴムを交換するつもりでしたが今のところはそのまま使っています。
フィルター&フィルターカバーのビビリには緑色の養生テープを貼って対応。