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YAMAHA FS-55

■2018年 機械弄りのメモ■ (レストア記は後日別稿)

2018年9月。以前から欲しかったヤマハのフロアステレオ、FS-55を入手。
11月中旬、BABYMETALの限定アナログ盤到着前にひとまずレストア終了。
 (アナログ盤はもったいなくて、まだ未開封)

yamaha fs-55


70年代後半、親戚のお姉さんの部屋にあったインテリア雑誌(私の部屋)の裏表紙に載っていた広告を見たのが始まり。
ハナタレ小僧ながらその斬新なフォルムに惹きつけられ、大人になっても忘れられず。

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雑誌【私の部屋 22号】(写真はその裏表紙)
数年前、ママチャリで秋葉界隈を走る楽しみを覚えた頃、ふと立ち寄った神保町の古本屋にて再会。

私の部屋 22




■以下、レストア記録は別稿として、とりあえずFS-55・主要作業のメモ

今までは置き場所の問題で入手を躊躇していたYMAHA FS-55の白、ついに到着。
保証なしジャンク扱いは承知。例によって使用終了以来、手付かずのウブな状態である事を願う。
届いた品は使い終えた故障家電といった風貌の、望み通りの逸品。

やはりデカイ。機械のある部屋に運び込んで分解前の点検とかはもう無理。玄関で持ち上げて廊下に置いた台車に載せ、部屋二つ通過してキッチンで荷解きと点検。

yamaha fs-55 repair



スピーカーのプラグ(4P)が砕けていたので手持の新品と交換し、軽く動作テスト。
アンプ左右音出し確認(歪・ゲインの不揃いは感じず)、チューナーはアンテナ無しで放送が受信できる環境にないのでディップメーターを使いキャリアの受信と振動変調※で復調を確認(感度は未確認)、タイマーはチリチリ音だけで動かず。
2Wayのスピーカーは当然ながらネットワーク有、ウーハーのエッジ現存(程度は要チェック)。
筐体内外、汚れ・埃の堆積あり。致命的な破損、変形は無し。艶なんてどこにも無い。


※振動変調=ディップメーター(十代の頃に自作)を指で叩く。ビョンビョ~ンと変調が掛かる。

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雑な扱いのまま分解に挑むと筐体を壊しそうですが冷静に観察すればアンプ部の分離はさほど難しくなく、メンテも行い易い作りになっていました。シャーシには運搬時の持ち手となる打ち抜きや筐体に収める為のローラーまでついています。
マイナスドライバーやヘラを突っ込んで抉る部分は一切ありません。

アンプやチューナーは壊れていても直す自信はあるので機構的な所を先にメンテ。

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コパルのタイマー(ドラムクロックユニット)。60Hz仕様。
最終的にここだけは動作せず飾りになってしまうかもと弱気になった部分。
モーター軸のギアが経年劣化でボロボロ。弄っているそばからギアの歯が崩れ落ちる。

同じ表情のコパルやセイコー(シチズン系はコパルOEM供給が無かった模様)のドラム時計で希望する周波数の物を手に入れ、ユニットを丸ごと或いはモーターのみを交換する方法が思い浮かぶが、この世代のものは同じ症状が発生している可能性が高い。
実際にコパルのドラム時計で同じ不具合を検証したブログを拝見しました。

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USAには健全なギアから模りした複製ギアをeBayで販売している人がいました(主にボールクロック用モーターだが同型)。かの国は電圧は違っても周波数は60Hz、eBayの写真を見ても歯数・モジュールは同一のようであり、本機既存のモーターを使い60Hz仕様とするなら多分大丈夫でしょう。

しかしながら当地は静岡でも東電の50Hz、さて、どうしましょう。
要するに1rpm CCWの軸出力が欲しいのですが、ギアボックスを再利用するなら300rpmのモーターが必要。

yamaha fs-55 timer motor



① eBayで数千円払ってコピーギアを輸入。60Hz仕様で動作するまでレストアし、50Hz地域でもそのまま使えるようタイマー用に60Hzの正弦波インバーターを製作する。
② PICやArduinoで1分1発のパルスを生成、ドラムクロックの分進カムをソレノイドで押す。秒ドラムは諦める。
③ エアコンルーバー用等の小型ステッピングモーターを1rpm CCWで回す。制御はPIC。
③ aitendoで買った小型の液晶パネルを使い、それらしいデジタルクロックを作る。

秋の夜長、いろいろと考えを巡らせてしまいましたが実際にはどれも時間とコストがかかり過ぎ。
実際には上記を思い浮かべる以前に、ぼんやりと考えていた方法で修理完了。正解だったようで絵に書いたように収まりも良く、作業は半日で済みました。今のところ誤差も出ず問題無し(費用2千円弱。詳細は後日のレストア記録に)。

yamaha fs-55 timer repair



スイッチのクリーニング。
表面処理された部分なのでコンパウンドや紙やすりの使用は避け、綿棒と綿棒の軸とアルコールを使用。
可動側のコンタクトは厚紙を通したりして黒ずみを落しました。
仕上げは接点グリス。復活剤や5-56は使わず。

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本機に使用のトランジスタはパワーアンプ終段(準コンプリSEPP)とそのドライブ、チューナーのRF部と電源部にそれそれ見合った物、それ以外は2SC-458LG-C。
ちなみにフォノイコライザーはSANYOのIC。2018年現在、若松で購入可能。


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その2SC-458LG-Cの脚はマイグレーションとやらで真っ黒。

しかし分解前の簡単なチェックでは左右のゲイン差や明らかに天井を突いているような歪は感じられず。ならば70年代のオリジナルを尊重すべく、ここで闇雲にトランジスを交換する事は控えようと思いました。
マイグレーションに関してはその進行を抑制するためにも全てのトランジスタを一度外して脚を磨き、安物のチェッカーでhfeが偏差内に収まっている事を確認してから元の位置へ戻しました。
(こういったセコイ拘り、気休めこそが往々にして罠に嵌る切っ掛けとなる)


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コレやっちゃダメ。

脚は黒いけど音出てるし?。磨けば綺麗、中までは進んでいないかも?。
いや、そんなに甘くはなかったです。やはりモールドの中までやられるようです。

確かに一見は動くので、この世代の機械だからこの程度の騒がしさ(ノイズレベル)は許容範囲内だと思い込んでしまうところでしたが、実際はS/Nが大幅に劣化していました。昔のアンプだからとか経年変化は仕方ないとか、そういったレベルでない。冷静に考えれば70年代後半に作られた機器なら実力はもっと上(低ノイズ)な筈です。現状、一応音楽は聞けるが実のところは明らかに故障じゃん。

マイグレーションの報告があるトランジスタに関しては動作機器から外した物はもちろん、NOS品でも半パラ(半導体パラメータアナライザ)等で検査できないのなら使うべきではないと感じました。
不良を当時物と交換した結果、無事に音が通りましたので修理完了です、とはならない可能性が大。

ということで、もう70年代の2SC-458LG-Cに拘るのはやめ。TO-92形の2SC-458-Cテーピング品を購入し全取っ替え。こちらはhfeも恐ろしく揃っていました。

交換後は、これが普通なのでしょうが、ものすごく静か。

yamaha fs-55 2sc-458lgc



筐体はさすがヤマハ。がっしりと、かつ精度良く作られています。
アクリルのダストカバーは閉~全開の間に2段の静止位置あり。

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プレーヤー部分はヤマハの単体プレーヤーに同じ形の物を発見。従ってこのユニットはFS-55のために設計製造されたものでは無いようですが、そうであれば丸ごと交換を含め部品の手配に困る事はないでしょう。
ベルトはアマゾンの中華製を使用可、周波数変更は交換用プーリーがシャーシに付いていました。

yamaha fs-55 phono



タイマーの照光は放電管によるもの。緑色のネオン管と言いがちだが、博識なOMからフロー管と指摘が入るかも。

到着時は劣化で輝度ほとんど無し。LED化とか野暮な事はせず、新品のフロー管と交換。
ドラム式クロックの構造上、照光ムラは仕方なしか。

プレーヤーの右はオプションでカセットデッキが入ります。
有ればパーフェクトでしたが、無ければ無いで遠慮なく別の機器を組み込めます。

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普通にトランジスタアンプのいい音です。
自分が手を入れたという愛着で若干贔屓目にはなっているのでしょうが、我が家のオーディオセットとして現役で十分に活用できるレベル。
スピーカーに関しても今まで小径フルレンジばかりだったので本機のバスドラを追えるような低音は新鮮。

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今後、優秀なプロショップさんが本気で仕上げて来れば話は別ですが、現在のところは世界中を探しても希な【普通に動くFS-55】でなはいかと自負しております。

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FS-55レストア作業の詳細編は後日に改めてアップする予定です。






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SONY EDV-9000

■2018年 機械弄りのメモ■

10月。
数年前にジャンクで手に入れたEDベータが出てきたので軽く点検、掃除。
詰まっていたテープを鑑賞。

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壊れたデッキのカバーを外して見えたテープが~世界の車窓から~なら、弄る気は起きなかった。
幸いにも宇宙企画の正規品。

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指でプーリーを回しテープを回収。デッキの方はセンサー(テープエンド)のスプリングフックに折れ無し、ローディングモーターのベルトを交換してヘッドを掃除。その他、機能の点検とかS/Nの測定は後回し。

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宇宙企画 知里「・・・ひとりごと」をテスト鑑賞。
当時はこういったイメージシーンがあって、それから、、と昔を思い出す。

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2018年10月21日、昼前。
伊東の山から望む富士山が真っ白。

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Tektronix 453 early model オシロスコープの修理【3】

Tektronix type 453 early(S No.<2000) 50MHz dual-trace oscilloscope
ジャンク購入のテクトロ年代物オシロ・修理メモ【3】(完)

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実はZ軸基板上の焦げた抵抗(今も放置中)を回路図で探した際に気付いた事があり、そこを検証した後にあまり触りたくない高圧部分(CRT駆動部分)の点検を始める予定で作業を進めました。
結果的にはその読みが的中し、高圧を触る前にトランジスタの不良を発見、とりあえず手持の適当な物に交換したところで輝線が現れ、CH-1/CH-2の振幅が読めて A/B両トリガが掛り、SWEEPもA/B共に走ることを確認できました。

まだ輝度が制御しきれておらず、焼けてる抵抗を含め交換すべき部品もありそうですが、年内に作業台の製作を始めたいので一旦作業を終え、カバーを組み戻しました。



■Z軸 輝度・ブランキング回路の検証

TRACE FINDER を押しながら電源を切ると瞬間だけ輝線が現れる。
この確認によって、少なくとも高価で入手が難しいCRT(ブラウン管)に致命的な破損がない事、高圧回路も故障により完全に動作が停止している訳ではないという事が判明。

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Z軸(このオシロでは輝度であり3D描画ではありません)の基板や回路図を見た際、なんとなく、ブランキング(輝度抑制)状態が続いてしまっているのではないか?という考えが頭を過ぎりました。

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上の図で、Z軸アンプの故障により出力【Unblanking Pulse】がインアクティブから変化しない状態に陥っているとしたら?。
表現を変えると Unblanking がアクティブにならないとしたら= blanking (消灯)のまま。

という事で再びマニュアルからZ軸基板の回路図を探す。
トランジスタは4本。この基板ではスイープ回路から来た信号の極(ポラリティー)と振幅を整えているように見えます。
回路図には測定ポイントの電圧と共にサンプル波形も記載(マニュアルで指定された設定を本体に施した際の値)。

トランジスタを含む部品の故障が発生した場合、回路の出力はアクティブ/インアクティブどちらかの状態に固定される確率が高く、その影響は当然ながら画面(管面)の明暗に及びます。

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回路図と現物を見比べ。


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プローブ当てる前から、これで今回の大きな問題は解決する事を予感。
ここで初めてプリンターで回路図を一枚印刷。測定用のオシロの電源も入れる。

まずこの基板の2箇所の出力はいずれも振幅なし。あっ。
続いて入力(回路図左側)の方から順に、図に記載の波形とオシロの波形を比べる。
Q1034のコレクタ、振幅ないヨ。ダメじゃん。

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とりあえず基板上のクリップで留められている3本の脚を外し抵抗値を読む。
EC間、極性を変えても針が大きく振れる(アナログテスター)。

特有なマウント方法を解き、Q1034を外す(リアカバー側/ACインレット付近)。

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コレクタに結ばれる2本のうち、R1034側はプラスチックのバンド(押さえ)中央にあるコンタクトをトランジスタのケース(コレクタ)に押し当てる事で導通を得ていました。もう一方は脚を使って基板上のクリップ(M)に。

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格安の測定ツール。持っていないと時代に乗り遅れている気がして、まあ参考程度に活用しています。

テスターでもBE/BC 間の極性は確認できるものの、 EC 間が 15/35 Ω。
やっぱダメじゃん。

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再びマニュアルに戻ってパーツリストに目を通す。
Q1034 Tek No.151-0124-00  =TA1938選別品

メーカーはRCA、1969年夏にディスコンリスト入り?

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スペックが得られただけでも幸い。

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Pc=1W/ft=250MHz
2m(144MHz帯)のハンディートランシーバーのドライバ用あたりが浮かびますが、Vcb/Vceがやや高め。

東京なら速攻で秋葉原へGO。でもここは伊東。
業務スーパーはあるけど、半導体の扱いは無い。手持から探すのみ。

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なんとか行けるかな、という物を3種選び、2SC3421に決定。

オーディオ用ですね。
コレも現在ではディスコンとのこと。以前に秋月で買った物だと思います。
耐圧、パワー的にはOK。コレクタ容量オリジナルと比較して大、ftも100MHz低いけど多分コレで試運転は大丈夫。

2sc3421



必要な分だけ脚を曲げる。
マイカ板(死語?)いらないし、既存ネジ使えるし。

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本来であれは仮組みで動作を見てから組付けるべきですが、もう動く事は予想できているのと、慌しい師走も近いのでこれを本組みとします。

アマゾンで買った熱収縮チューブでカッコつけてみたが全然カッコ良くない。
東京に戻ったらまた鈴喜デンキさん(@ラジオデパート)で買うようにします(絶対高品質)。

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九分九厘、画面に波形は出るはず。臆することなく電源を入れるだけ。

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■反省

作業記録を書きながら思い浮かんだ反省点。

真剣さが足りていないというか、省略が多すぎ。

CRTのヒーター切れに怯えるならソケット外して抵抗値を測れば良いものを、それすらしていない。
(実は到着時点でこの辺は壊れていないという信念が若干あった)

オーディオアンプの修理だとしたら、出力の波形を見ながら(あるいは壊れても良いスピーカーやイヤホンを繋いで音を聞きがら)、入力から順番、あるいはその逆に終段から入力方向へ、トランジスタならベース、FETならソースを指で触ったりテスター棒でガリを起こして音が通るかを確かめたと思います。

本機であるなら垂直入力(Yaxis=Vertical)やトリガー、掃引(Xaxis=Horizontal)は最初から垂直水平両ドライブ出力の波形を見た方が早かったはずです。
このオシロのCRTは静電偏向ですから偏向板(下の写真、赤円内)のピンに別のオシロのプローブを当てて波形を見るだけ。XYモードで動作を背取りする方法も取れます。

背取り中のオシロに絵が出なければV/H回路に不具合アリ、ブランキング無視ですから汚いのは承知で絵が出れば高圧かCRT制御の故障、またはCRTそのものが不良といったように問題の切り分けもより早く叶ったと思います。

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ドライブ回路といってもブラウン管の加速電圧ほどの電圧ではありませんので測定に怖気づく必要はありません。
ただこの手のブラウン管は本機もそうですが偏向板の端子が首の途中に細いピンで出ているものが多く、扱いを間違えてピンを折ってしまうと、もう完全にオシャカとなってしまします。

言い訳になりますが、今回は少々ナメた気持でワークスペースを確保しないまま、事務用机の上で作業を始めてしまいました。検査用のオシロはプローブケーブルがなんとか届く距離の床の上。プローブの取り回しに若干苛立ちながらの作業でした。

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ちなみに本機のCRTの加速電圧(アノード電圧)は8KVということです。
パワー的にはプロフィール(ソニー製ブラウン管テレビの名機?)より全然低いものの、触りたくない電圧です。

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Tektronix 453 early model オシロスコープの修理【2】

Tektronix type 453 early(S No.<2000) 50MHz dual-trace oscilloscope
ジャンク購入のテクトロ年代物オシロ・修理メモ【2】

電源投入前の観察を午前中に済ませ、午後は窓を開け(万一コンデンサが燃えると臭い)、それなりの覚悟を持って電源を入れてみました。
当然のことながら不具合アリで正常動作せず。

ネットで回路図の入ったマニュアルを拾い、午前中に見つけた劣化部品の検証から始め、部分的な動作チェックを実施してみました。



■動作確認

電源入れても画面は沈黙。

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普段使いのオシロがTek 2445Bとkenwoodの年代物40MHz、いずれも古いアナロ機なので使い方に大きな違いは無いハズなんですが、他人の自動車を運転するようなぎこちなさに襲われ、入力から順番に考えながらツマミを捻る。

普通はこの辺で輝線が出てフォーカス取ったりするよなぁという所まで来ても何も映らない。
アンキャル、トリガーなどのパイロットランプが都度点灯するのは救い。
低圧電源側の回路はきちんと動いているような気がするんだけど。

そしてその結果が怖く最後に残しておいたTRACE FINDER を押す。変化なし。えッ~。
 落胆方向にドキッ
  波形で心境を表現するとフォーリングエッジ
   日本語では立ち下がりエッジ(この言葉は嫌い)

厳しい現実を突き付けられたのかも知れません。コレを押して反応しない場合、高圧トランス(フライバックコイル)やCRT、すなわち高価な主要部品の故障・寿命と判断されることも有り得る訳で、予算のある研究室なら装置入れ替えの理由に十分。
もちろん100%そうだとは言い切れませんが、つい嫌な事を考えてしまいます。
コイル焼き切れてるのかな?ヒーター断線かな?。

CRTの首はほんのり温かいような気もするけど、シールドで中が見えない。

電源を落として頭を冷やす。



■マニュアル取得

リペア情報を検索。残念ながら国内のOMの経験談は見当たらず。英語圏では幾つかヒット。この手のインストルメンツは素人が触ると高圧あっからヤベーヨから始まり、修理のセオリー、PDFより紙のマニュアル用意しろ、特異あるいは現在では希少な部品のウンチク(耳年寄りの横槍)、サプライヤーへのリンク…。
外人だから英語だからと、それだけでそれなりのスキルがあっての発言だと闇雲に信じるのは危険。
壊れてる→ケミコン全とっ換え→アレレまだダメとか、どこの国にもいらっしゃいます。

向うの掲示板には垂直入力の初段をFETで作り変えたり、ロシアのパーツを使って修理された方の記述もあるようですが、ニュービスタもトンネルダイオード(日本人なら江崎ダイオードと呼びたい)も無条件交換が必要な程の短命・脆弱な部品ではなかったような気がします。

※それよりも夏の終わりにレストアした70年代のヤマハのアンプに入っていた2SC-458LG-C。
それまではネット上の情報を半信半疑で聞き流していましたが実際に向き合うと、もうフザケンナみたいな感じ。
マイグレーションとやらで(倉田まり子のデビュー曲?)、1500円のLCRメーターでは具合が読めませんでした。
壊れたからと言って同年代の抜き取り品と交換するのは危険。信号が通ったとしても性能を取り戻せていない可能性があります。
機会があれば半パラ(半導体パラメータアナライザ)とオーディオアナライザ(大穴?)で検証します。

話戻って
型番+PDFで検索、調整手順や回路図が掲載されたサービルマニュアル(今回はインストラクションマニュアルと記されていた)が手に入ったので先に進みます(OCRを通していないPDFなのでコピペで和訳は不可)。

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テクトロやHPのマニュアルには調整方法、回路図、部品のマウントなどが普通に掲載されているので効率的に作業を進められます。が、これだけの情報が得られた以上、それでも故障箇所の特定ができない場合は本人のスキル不足という事になってしまいます。
教科書ガイドを全教科分揃えたのに追試とか、カコワルイ。

(修理を終えられるかについては部品入手などの問題を解決する必要があるので別の次元)



■問題の切り分けと検証
諦めるにはまだ早い気がするので、まずは午前の部で見つけた劣化部品を探ってみます。

●リア部分のラグ板に載ったケミコンを回路図で探す。

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粉吹きコンがC937、その上にあるヒューズがF937。
繋がっているのはCRT駆動に必要な高圧を得るための昇圧回路(いわゆるデコデコ)の電源ラインじゃん。供給源は低圧電源部のアンレギュ(レギュレター前の整流~平滑コンデンサ部分)。これは容量ゼロでもメインの平滑コンが活きていれば、まあ大丈夫なハズ。
容量抜け切りで要交換には間違いないでしょうが、故障の原因では無いと思います。
ということでとりあえず放置。

ちなみにヒューズ(F937)は昇圧回路の保安用。コレが切れると高圧が飛ばない(高圧が出ない)。現状は健全。

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●低圧側のレギュレター基板上のケミコン

電源基板にも劣化したケミコンがありました。

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マニュアルに電源部のテストポイントが記されているので現状のまま測定。
それらしい電圧が出ているのでここも放置。
(マルチメーターの校正期限が切れている事に気付きました)

パイロットランプ類の点灯具合を見る限り、トリガーが掛りスイープがスタートしているような感触は得られているので今すぐに電源を弄る必要は無いと判断。ケミコン劣化でリップルが増加、その影響として画面が泳いだり、トリガーレベルが揺れるとしても画が全く出ない事には繋がらないはず。

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●Z軸の焦げた抵抗

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回路図を見るとインサーキットのまま測れそう(冷静に考えたらこの機械は真空管と半導体は全てソケット実装。CB間/CE間短絡時の影響を考慮しなければならないのならトランジスタ(Q1043)を抜いて測れば良いだけ)。

テスター読みで約50Ω。半燃え?半萌え?。
ソリッド抵抗も燃えれば無限大になるはず。抵抗値が低下しているのは燃え切れる前だから?。

100Ωが50Ωに変化したから動かないという訳では無いはず。
やや乱暴ですが抵抗値が残っているので放置して先に進む事にします。

一時間程度電源を入れても現在はこの焦げた抵抗が熱くならない。
ココ、今は電流が流れてるのかな?。

※ネタバレになりますが、この直感が今回の修理のターニングポイントでした。

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以上で午前中に内部を観察して気付いた部分の検証は終わり。


●垂直アンプ・スイープゲートの確認

サイドパネルにあるCH1-OUTとA/Bスイープのゲート出力を使って各部の動作確認。

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この辺は健全な気もするが、ここで確認をしておけば先々悩んで逆戻りする事もなくなると思い、午後のスナック(鯛焼あられ)を頬張りながら簡単にチェック。
袋が邪魔ですが1KHzのCAL出力をCH-1に結び、サイドパネルCH-1-OUTの波形を見ます。

※フロントパネル内、CH-1入力コネクタの右上にあるVertical modeと同軸のtriggerセレクタ(内側の赤ツマミ)をNORMに入れないと信号が出て来ない(サイドパネルのコネクタ下に注意書き有)。

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CH-1アンプ、動作していました。
CH-1入力からアッテネーターを通ったCALの矩形波が50年以上前の真空管とトランジスタで増幅された波形です。
ATTを回せば振幅が変化=おそらく正常。

それにしても古い機械なのにCALの周波数が実にそれらしい値になっています。
(測っている方のリードアウトも未校正なので単なる目安)

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A/B GATE
トリガーによって開始される一掃引期間(X軸左始点から右終点までの一描画期間)を示す信号だったと思います。すなわちスイープに同期した矩形波のようですが、波形が出ているという事はすなわちトリガーが掛かってスイープが走っているという事だと思います。

この矩形波のエッジを始点に一定間隔でCH-1 OUTをキャプチャ(サンプリング)すればデジタルオシロが作れますね。

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ここまで来るとある程度の問題切り分けが叶います。
まだ予想の範囲を出ませんが、CH-1の垂直アンプ、トリガー、A/Bスイープは正常。
やはり問題は高圧を含む表示制御・駆動部分、すなわちCRT(ブラウン管)に近いところ?。

この辺は古い測定器の購入を諦める(諦めさせる)ための言い訳にも利用される部分ですね(ブラウン管が逝ってると手に入らない、高圧が壊れていると修理に手間が掛かる…)。


●高圧(CRT駆動部分)の確認

さきほどの確認通り、現状では TRACE FINDER(ビームファインダー)を押しても輝線は現れません。嫌な予感的中でCRTがいかれているのか、または高圧が飛んでないのか。

ちなみに、HPの141Tにスペアナプラグインだとボタンを押しても機能が無いので輝線は出ないのが正常(アレはオシロプラグイン専用)。

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高圧のテストはカバーを開けての作業になりますが、あまり触りたくない部分。
何とか管面に影のようなものだけでも映ってくれればと願いつつ、やや乱暴ですがTRACE FINDERを押したまま電源をON/OFFしてみました。

するとONからOFFへ落した際、ほんの瞬間だけ輝線が現れます。
(下の写真は動画から切り出した静止画です)

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CRT壊れていない。高圧も壊れていない。この機械、多分直せる。



直せなかった言い訳を探したり、カバーをそっ閉じして仕舞い込まずに済みそうです。
修理は夕食後としました。







Tektronix 453 early model オシロスコープの修理【1】

Tektronix type 453 early(S No.<2000) 50MHz dual-trace oscilloscope
ジャンク購入のテクトロ年代物オシロ・修理メモ。

今月の18日夜、何方とも競わずに落札してしまった格安ジャンクです。
必要に迫られてではなく、修理を楽しめたらいいな程度のノリで手に入れてしまいました。

本体価格より送料の方が高額となるも、晩秋のウィークデーに代休取って秋葉に出たらそれ以上の小遣いを浪費したハズなので、コレはコレで数日分の玩具を買ったと思えばそれなりに幸せ。

20日の夕方にゆうパックで到着。破損が無い事を確認し、弄るのは代休入れた21日の午前から。
以下はその記録。



■外観程度

50年以上前の測定器です。eBayではまだそこそこの値が付いていますが国内ではどうなんでしょうか?。
競う人いなかったし、世間的には中国製DSOキットの方が魅力的かも。

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フロントパネルにロゴを削った跡がありますがおそらくIBM納入モデルでしょう。
年式相応の汚れアリ。水没や落下歴は無い模様。

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ツマミに欠品なし、ハンドル左のプレートも現存(ココ重要)。
ミントコンディションには程遠いものの内外共に致命的破損は無く、物好きのコレクションには成り得るレベル。



■内部の確認

動作には拘らず、ただ誰かが修理にチャレンジした物では無い事だけを祈りました。
(元の位置がわかるように)半固定にマジックで点々とか、接点復活剤が飛び散った跡などが出れば残念賞。


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基板を起こした跡やビスの頭の荒れはメンテナンスの作業に因るものでしょう。改造跡は見当たりません。不調部分があるにせよジャン測としては所謂「ウブな状態」を維持しているように見えます。


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金メッキパターンのプリント基板には1965(年)の文字。半導体は全てがソケット実装で脚は金メッキ。

秋葉原でバイトをしていた80年代後半、ワゴン車にジャンクを載せて売りに来る方(記憶の限りお名前は片山さん)と知り合う機会がありました。埼玉の倉庫に招かれた事があって、そこには当時の年代で見て中途半端に古い測定器や事務機(放電破壊式FAXとか)なんかがが山積み状態。ドラム缶に基板やLSIが入っていて、何かと尋ねたらコレから金を回収するとのこと。しかし金メダルを作るとは仰いませんでした。

 ※記述中 仰いません か 仰りません で悩みました。

今が80年代ならこのオシロも金取りの為に供出されたかもしれませんが、製造から50年以上経過した現在は不動でも壊すより保存すべきだと思います。
(大好きな千駄ヶ谷、そこにあった旧国立競技場。60年代の日本でオリンピックがあったという記憶のためにも残して欲しかった)

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真空管が使われているのが453 early model だそうです(シリアル20000番以前)。
もろ該当機です。

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ニュービスタ管です。
高校生の頃、近所にいらした年配のOM(コールプレートもちろん黄色)に教わり、拾ったテレビのチューナーから引き抜いた記憶があります。

数年前、日立のオシロを弄った時にも出くわしているので個人的にはさほど珍しくないが、今の時代ならエフェクターなんかを研究・自作している方に如何でしょうか。インピーダンス高くできるので初段に置けまっせ。
(この機械で使われている8393ならプレート電圧は75Vだそうです。中華製の昇圧DCDC基板で作れますね)

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下の写真内右下、タイト製のラグ板に載ってるコンデンサのうち、上の物は銀色に透明チューブを被ったケミコンのハズですが黄色く変色し異物が付着しています。

ファンも回るけどゴロゴロうるさい。

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カバー裏側の汚れ。
外から流れ込んだと言うより内側から来ている感じ。位置的に考えると上の写真のケミコンの電解液かも。

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低圧側の電源基板にも異物で汚れ変色しているケミコン有り。

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Z軸(液晶でデジタルオシロを作る人には無縁の次元ですね)の基板上に焦げた抵抗。
(抵抗値は今のところ維持=開いてはいない)

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21日の午前はここまで。



何でもアリなのが趣味レベル。
目視や自分の知識だけで部品の異常あるいは寿命を判断し、液漏ハケーンとヒャッハーして即交換してしまう方法もアリかもしれません。厳しいOMに叱られたとしても、それが法律に触れて検察が動く事はありません。
しかしカッコつけた言い方をすれば機械の修理にはパズルや方程式を解くような楽しさがあります。求める故障箇所が方程式の解だとすれば、そこに辿り着くまでの過程を楽しむのも秋の夜長にはまた良いものです。








プロフィール

Dellbee

Author:Dellbee
デルビィです(少年時代にハマったアマチュア無線局のコールサインを捩りました)。
子供の頃から電子電気・機械物弄りが好きで、今も自分の時間が取れた時は何か弄っています。

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