2013/07/12
SHARP LC-26BD1 テレビの修理 (液晶AQUOS)
液晶割れ無し、画面映らずのアクオス LC-26BD1 液晶テレビの修理記録6月の半ば、ハードオフでSONYのAVCHD動画付コンデジ(DSC-HX5V)を買いました(ジャンク品)。
バッテリーロック爪折れ・簡易チェックのみ・保証無し¥1050-。使ってみるとこれが面白いのなんのって。
そして無性に専用のモニターが欲しくなり(いつものビョーキ)、オクでシャープの18.5インチ・ジャンクテレビを落札。これは到着当日に修理は終わったものの、画を出すと、あれ?なんか画面小さ~で物足りない気分。
で、もう少し大きい物をと、またオクで物色。
18.5インチが簡単に直ったので、次も不動ジャンクは当然ですが、「液晶割れなし」、「バックライト劣化など明らかなアラートが出ていない物」、「送料込で3千円程度まで」を条件に、シャープの26インチ液晶アクオス・LC-26BD1をどなたと競う事無く落札しました。
(はこBOON発送で助かりました。ガラクタ・ジャンクのテレビをらくらく家財なんかで送られたらもう大変)
SONYのコンデジDSC-HX5Vと修理の終ったLC-26BD1。

仕事が終ってからの3時間×4日間で辿り着いたお茶目な犯人(赤円内)。
原因はアリンコでも担いで運べそうな1個のコンデンサが劣化により抵抗化。
OPアンプのパスコンが20Ωの抵抗に変身し、それが過負荷となってレギュレターの保護回路を働かせ、複数の液晶駆動電圧が全部止まっていました。

●以下、LC-26BD1の修理記録です。いつか、どなたかの参考にでもなれば幸いです。
7月8日午後、ジャンクテレビが会社に到着。出品コメントそのまんまの状態に安心。
バックライト健全、パイロットランプの点滅などシステムアラート無し、RF受信、音声正常、画面だけが全く映らず。
外観は大きな傷もなく、中古家電としては<上>の部類。ヤニ臭さも皆無。

オヤジといえど業務時間中に「趣味」を始めるわけにも行かず、業務時間終了後に中身を拝見。
先の18.5インチとは明らかに違う基板構成。左からシールドに覆われているチューナ&ロジック部(三階建て)、電源(メインはアンレギュレーテッド=整流・平滑だけで定電圧安定化は各ボードに入ってから行っているようです)、そして状態の良い(綺麗な)7灯用のインバーター。

液晶に電源が来ていないような印象ですので、とりあえず電源の基板をチェック。問題無いみたい。
カーボンの付着も無く、一見して四六時中映しっぱなしの酷使済、バックライト寿命機などとは違う印象。

液晶のフレームにビス5本程度でサブシャーシがマウントされています。
テスターの右、シールドに覆われた小さい基板がありますが、LVDSインターフェースでした。

下の写真がそのLVDSインターフェース。基板に記された「CPWBX3413TPZ」で検索すると山ほど出てきます。
中華通販からe-bayまで、一部は液割れテレビから剥がした物を売りに出しているようですが、需要があるから供給されていると考えるならば、壊れやすい基板なのでしょうか?。
e-bayを覗くと 「この基板の対応テレビはSHARPのLC-26P70Eだよ」 と説明文有り。
輸出モデルでLC-26BD1ではありませんが回路図の載ったサービスマニュアルも落とせました。
もうちょっと弄りたい気持を落ち着かせ帰宅、風呂入って就寝。

2日目、午前は父親の通院付き添い、午後=仕事。夜になってから前の晩に考えていた事を検証。
LVDSインターフェースのコネクタ部分。

この基板を使っていると思われる輸出機のマニュアルからLVDS出力(駆動)側のピンアサイン(クリックで拡大)。
ピン番が逆だったりしてオイオイなんだよ状態ですが、良く見ると参考にはなりそうです。
(※輸出機のサービスマニュアルには全回路図(当然LC-26BD1とは異なる物)が載っていましたが、液晶パネルとLVDSインターフェースは一つの部品扱い。よって回路図はロジックボードのLVDS出力までで、LVDSインターフェース以降は無し。)

さて、現状は画が出ないジャンクテレビ。観察を終えたところでどこから手をつけるか考えました。
①液晶=割れていない。縦横のドライバが壊れたような縞模様も表示されない。
②メイン電源の基板=壊れていない→RF、AF、ロジック、、、全てそれらしい電源電圧が掛かっている。
③電源を入れてもパイロットランプによるアラートが出ない~システム自身は正常のつもりで動いている感じ。
=入力の切替に伴い、対応した音声出力も有る。
液晶テレビの修理は数台しか経験がないので生意気は言えませんが、落札前から故障原因は液晶に駆動電圧が掛かっていないだけのような気がしてなりません。
かといって決め付けてしまうと泥沼に陥る事も有るのでまずはLVDSコネクタの前後から探ってみることにしました。
A)ロジックボードからLVDSの信号は出ているが、それ以降の故障で液晶が駆動されない(電源不良含む)。
B)ロジックボード側の故障でLVDSが出ていないから液晶が駆動されない。
コネクタ部分の信号の有無により故障箇所の切り分け(LVDSコネクタの前か後)はできるはずです。
バラしたサブシャーシをもう一度組み付けてロジックボードが信号を出力しているか確認。
上の回路図で言うとコネクタに繋がるコイルの部分にプローブを当てています。

LVDS(差動信号)の片側とGND間にプローブを当てているので振幅の絶対値は読めませんが、それらしい信号が来ている事だけは確認できました。電源も+5Vが同じフレキのケーブルからLVDSインターフェースに掛かっています。

●やっぱ変なのはLVDSインターフェース基板か液晶パネルそのもの。
、、、という結論で2日目終了。
自宅に帰り、風呂に浸かっている間も次の切り分け方法の模索で頭の中いっぱい。
3日目、このテレビを弄り始めてからずっと猛暑。
熱帯夜に苛立ち、液割れをもう一台買って基板を差し替える事を考えてしまいました(弱音)。
しかし、それなら手元の基板は壊してもいいやと大胆な気持も沸いてきて・・・。
液晶パネルからLVDSインターフェース基板を外しチャレンジ開始。
液晶駆動には複数の正負電圧が絶対に必要なはずです。
対してこのテレビではLVDSインターフェースを表示(液晶)部分のフロントエンドとして考えた場合、そこに加えられる電源は+5Vのみ。ということはLVDSインターフェースの基板上で液晶駆動電圧を生成しているに違いありません。
下の写真右側、DC-DC用のコイルやMOS FETが見えます。
また、輸出機の回路図を見る限り大元のシスコン(システムコントローラー)からLVDSインターフェースに繋がる配線中にはLCD-ENABLE;液晶駆動開始;のような制御線は見当たりません。
おそらくはLVDSインターフェース~液晶パネルまで、これらは+5Vの電源を通せば単体で動作を始め、どこかにDC-DCで生成された+5V以外の電圧が現れるはずです。
そんなもくろみを持って電源用の電線をハンダ付けしてしまいました。

レトロな安定化電源です。
電圧可変に加え、電流も制限できます(結構重要)。実験用電源の電流は流せるに越した事は無いとか、余裕を持って大電流(大容量)タイプへと走りがちですが、電流が多く流れればそれだけデバイスが燃える危険性も孕みます。
学生時代、シンセサイザーを作る最中に仮のトラッキング電源としてニッカド電池を使いました。ちょっとしたミスでトランジスタの頭が飛びました。
アルインコのトランシーバー用電源(電圧のみ可変・電流は固定、限界でフの字保護回路)でTTLにヒビを入れた事もありました。今であればリチウム電池で電子工作している方々、くれぐれもお気をつけください。
自分的にはレトロでもCC(Controlled-Current)付き電源が一番安心。
メーターもレトロなアナログですが過渡的な動きはデジタル表示よりも掴み易くなります。
さて、電圧は5V。制限電流は0.5A程度から実験開始。

電源を通した瞬間、電流計が+側に、電圧計が0V側にピクンと振れ(明らかにリミッターが効いている状態)、その後は数mA程度しか流れません。
起動電流不足かと思い、電流制限を2Aまで上げましたが症状は同じ。
投入時のピクンは安定化電源、基板側、双方のリミッタが効いているような感じです。過渡的な現象なので基板上+5V~GND間のスタティックな抵抗値を測ってもさほど低くはありません。
●+5Vのラインはコネクタ脇のチップヒューズを含め健全。
●若干の電流は流れているので基板が完全に壊れている訳ではなさそう。
・過渡的反応からどこかでリミッターが効いているような印象。リミッターが働くのは活きている証拠。
ということで念のため安定化電源の電流制限を0.5A程度に落とし、それらしい所の電圧を見ることにしました。

DC-DC回路の物らしきコイルの前、POWER MOS FETが2回路ともOFFのままです。
ゲートは電源のON/OFFに対し、若干のディレイを持って立ち上がります(P-ChのFETなのでOFFになるよう作用している)。=コントローラーがここで電流を止めている訳です。
FETのゲートは横のICに繋がっていますので、おそらくこのICが駆動電源のコントローラーだと思われますが、この辺はカスタムチップだったら仕様が出てこないかも、、、。
ダメモトで型番を検索するとローム製のTFT-LCD用の電源ICであることが判明。
TFT LCD駆動に必要な全ての電圧生成とそのON/OFFタイミングを任せる事ができる物のようです。
ネットで拾ったBD8150KVTのアプリケーションノートの一部(クリックで拡大します)。
基板の回路ともほとんど合致しています。

BD8150KVT データーシートのPDFも入手でき、これで鬼に金棒。
●図では63ピンがイニシャルコントロール、データーシートではDC/DC control switch 2
おそらく当該電源システムの起動スイッチ=LCD-enableでしょう。
●34ピンはオールイネーブル、データーシートでは All channel output enable
3.3V出力でプルアップされていますのでオープンコレクタ出力、全ての電圧が時間的シーケンスに従って出揃った後、アクティブとなる信号みたい(推測)。
●そして49/48ピンは図でも実物でもDC-DC用FETのゲートに繋がっています。DC/DC driver output 1/2。
現状ではここがHIレベル(OFF)のままでDC-DCが動かないわけです。
どこかが溶けて短絡、過負荷になってリミッタが効いているのでしょうか?。
もうおおよその部品の場所も判ってきましたので、単純に抵抗値を測ってみました。


一番大きなパワーデバイスがあるDC-DC電源出力部分の抵抗が20Ω。回路の規模に対し尋常ではないような値に一瞬テスター棒の極性を間違えたかと。しかし合っています。
④のダイオードとその先の平滑Cは正常ですのでこの低抵抗値は図の左側にある電源側でなく、同じ基板内ではありますが、その電源で駆動される負荷側の値となります。
この先のどこかが壊れていると言う確信を得て、この日の作業を終了(基板のみ自宅にお持ち帰り)。
基板の表裏を眺めつつ、昨晩同様、さらに問題箇所を追い込む方法を寝るまで考え続けました。
4日目、自宅から彫刻刀を持って出社。
前の晩、不良箇所の切り分けから思いついたのが 「不良箇所まで切り離し」。
DC-DC回路から負荷に繋がるプリントパターンは頭の中に入りました。裏面のパターンからスルーホールで幾つかのブロックに結ばれているので、その節々を、文字通り切り離して抵抗値を測って行けば20Ωに辿り着けるハズです。
多層基板なのでカッターやリューターは厳禁でしょう。天下の彫刻刀でも三角のみは深くなりすぎて危ないので丸のみを活用。銅箔にガラエポ、刃が鈍るのは百も承知でパターンカット開始。

基板上の位置ではDC-DC部分から液晶パネルのコネクタを経由して反対側のブロックにパターンが延びています。
大別してダイオードのグループ(5~6)に入るスルーホール、基板隅のオペアンプの電源に入るスルーホールが見られますのでその節々でパターンカット。
どう見ても層内部のパターンはベタのグランドプレーンなどではなく、立派に配線が走っています。深く掘りすぎたら基板そのものがパー。かといって力を抜くと刃が滑るし・・・。

ルーペでパターンが切れている事をを確認し、抵抗値をチェック。
ほとんどが100Ω以上ですが、一箇所20Ωが出ました。
表側でオペアンプらしき8ピンICの8ピンと反対側がGNDに接続されたチップ部品。ICのパスコンでしょう。

このICが650mA×13Vとして8.45Wも消費またはドライブできる物ではないでしょうし、万一溶けて短絡してれば0Ω、焼ければ∞Ω。
手前のパスコン不良であって欲しいと言う願いを込めて、外してしまいました。
見事に20Ωの抵抗化。ICの電源とパラに20Ωのダンピング抵抗を入れる意味はないのでパスコンの劣化に間違いないと思います。
極性のマーキングは見当たりませんが、若干の極性ある抵抗化(電流方向により数Ω異なる)なのでタンタルの劣化っぽい気がします。

代わりの部品は恐らく前世紀末に秋月で買った積層セラミックコンデンサ。一度何かに使った物です。
何をもって判断すべきか悩ましい所ですが、足らなければ足すし、余れば釣はいらないということで0.47μF。
動作に乱れが出るようなら後でパラにケミコンかタンタルを抱かすとします。

神経と彫刻刀の刃先をすり減らして彫った彫刻にハンダを盛って修復。

基板層内部のパターンを傷めていなければこれで直っていると言う確信を持って組み付け。電源ON。
安全第一の雑巾の脇から画面を覗き込み、右上に入力モードが表示されたのを確認しました。

側(がわ)を水洗いして組み直し。修理完了。

今現在お気に入りのデジカメ動画を再生している画を撮ろうとしたら、それを撮影するカメラそれ。
ではIVISを取り出して昨年の秋に撮った銀杏を再生。綺麗に映っています。
2006年製ですが今の安物より音がきちんとしている感じ。スピーカースペースがありプラ製のエンクロージャーに収まっているからでしょうか。

修理日記を書き終えてから再び LC-26BD1 を検索してみました。
同じような故障に立ち向かったブログは見出せませんでしたが、画面映らずの不良は出ているようです。
おさらいとしてLVDSインターフェース基板の大きな写真を上げておきます(クリックで2倍に拡大)。
今回交換した物と同じようなコンデンサが沢山使われていますが、画面映らずの故障の場合、この辺のコンデンサを洗って行けは基板交換をしなくとも修理が叶うかもしれません。

熱帯夜に苛立ちながらも修理が終ってしまうとまた物寂しくなってきます。
次は32とか37インチを修理してみようかなぁとか、、、。