2018/11/28
Tektronix 453 early model オシロスコープの修理【3】
Tektronix type 453 early(S No.<2000) 50MHz dual-trace oscilloscopeジャンク購入のテクトロ年代物オシロ・修理メモ【3】(完)

実はZ軸基板上の焦げた抵抗(今も放置中)を回路図で探した際に気付いた事があり、そこを検証した後にあまり触りたくない高圧部分(CRT駆動部分)の点検を始める予定で作業を進めました。
結果的にはその読みが的中し、高圧を触る前にトランジスタの不良を発見、とりあえず手持の適当な物に交換したところで輝線が現れ、CH-1/CH-2の振幅が読めて A/B両トリガが掛り、SWEEPもA/B共に走ることを確認できました。
まだ輝度が制御しきれておらず、焼けてる抵抗を含め交換すべき部品もありそうですが、年内に作業台の製作を始めたいので一旦作業を終え、カバーを組み戻しました。
■Z軸 輝度・ブランキング回路の検証
TRACE FINDER を押しながら電源を切ると瞬間だけ輝線が現れる。
この確認によって、少なくとも高価で入手が難しいCRT(ブラウン管)に致命的な破損がない事、高圧回路も故障により完全に動作が停止している訳ではないという事が判明。

Z軸(このオシロでは輝度であり3D描画ではありません)の基板や回路図を見た際、なんとなく、ブランキング(輝度抑制)状態が続いてしまっているのではないか?という考えが頭を過ぎりました。

上の図で、Z軸アンプの故障により出力【Unblanking Pulse】がインアクティブから変化しない状態に陥っているとしたら?。
表現を変えると Unblanking がアクティブにならないとしたら= blanking (消灯)のまま。
という事で再びマニュアルからZ軸基板の回路図を探す。
トランジスタは4本。この基板ではスイープ回路から来た信号の極(ポラリティー)と振幅を整えているように見えます。
回路図には測定ポイントの電圧と共にサンプル波形も記載(マニュアルで指定された設定を本体に施した際の値)。
トランジスタを含む部品の故障が発生した場合、回路の出力はアクティブ/インアクティブどちらかの状態に固定される確率が高く、その影響は当然ながら画面(管面)の明暗に及びます。

回路図と現物を見比べ。

プローブ当てる前から、これで今回の大きな問題は解決する事を予感。
ここで初めてプリンターで回路図を一枚印刷。測定用のオシロの電源も入れる。
まずこの基板の2箇所の出力はいずれも振幅なし。あっ。
続いて入力(回路図左側)の方から順に、図に記載の波形とオシロの波形を比べる。
Q1034のコレクタ、振幅ないヨ。ダメじゃん。

とりあえず基板上のクリップで留められている3本の脚を外し抵抗値を読む。
EC間、極性を変えても針が大きく振れる(アナログテスター)。
特有なマウント方法を解き、Q1034を外す(リアカバー側/ACインレット付近)。

コレクタに結ばれる2本のうち、R1034側はプラスチックのバンド(押さえ)中央にあるコンタクトをトランジスタのケース(コレクタ)に押し当てる事で導通を得ていました。もう一方は脚を使って基板上のクリップ(M)に。

格安の測定ツール。持っていないと時代に乗り遅れている気がして、まあ参考程度に活用しています。
テスターでもBE/BC 間の極性は確認できるものの、 EC 間が 15/35 Ω。
やっぱダメじゃん。

再びマニュアルに戻ってパーツリストに目を通す。
Q1034 Tek No.151-0124-00 =TA1938選別品
メーカーはRCA、1969年夏にディスコンリスト入り?

スペックが得られただけでも幸い。

Pc=1W/ft=250MHz
2m(144MHz帯)のハンディートランシーバーのドライバ用あたりが浮かびますが、Vcb/Vceがやや高め。
東京なら速攻で秋葉原へGO。でもここは伊東。
業務スーパーはあるけど、半導体の扱いは無い。手持から探すのみ。

なんとか行けるかな、という物を3種選び、2SC3421に決定。
オーディオ用ですね。
コレも現在ではディスコンとのこと。以前に秋月で買った物だと思います。
耐圧、パワー的にはOK。コレクタ容量オリジナルと比較して大、ftも100MHz低いけど多分コレで試運転は大丈夫。

必要な分だけ脚を曲げる。
マイカ板(死語?)いらないし、既存ネジ使えるし。

本来であれは仮組みで動作を見てから組付けるべきですが、もう動く事は予想できているのと、慌しい師走も近いのでこれを本組みとします。
アマゾンで買った熱収縮チューブでカッコつけてみたが全然カッコ良くない。
東京に戻ったらまた鈴喜デンキさん(@ラジオデパート)で買うようにします(絶対高品質)。

九分九厘、画面に波形は出るはず。臆することなく電源を入れるだけ。

■反省
作業記録を書きながら思い浮かんだ反省点。
真剣さが足りていないというか、省略が多すぎ。
CRTのヒーター切れに怯えるならソケット外して抵抗値を測れば良いものを、それすらしていない。
(実は到着時点でこの辺は壊れていないという信念が若干あった)
オーディオアンプの修理だとしたら、出力の波形を見ながら(あるいは壊れても良いスピーカーやイヤホンを繋いで音を聞きがら)、入力から順番、あるいはその逆に終段から入力方向へ、トランジスタならベース、FETならソースを指で触ったりテスター棒でガリを起こして音が通るかを確かめたと思います。
本機であるなら垂直入力(Yaxis=Vertical)やトリガー、掃引(Xaxis=Horizontal)は最初から垂直水平両ドライブ出力の波形を見た方が早かったはずです。
このオシロのCRTは静電偏向ですから偏向板(下の写真、赤円内)のピンに別のオシロのプローブを当てて波形を見るだけ。XYモードで動作を背取りする方法も取れます。
背取り中のオシロに絵が出なければV/H回路に不具合アリ、ブランキング無視ですから汚いのは承知で絵が出れば高圧かCRT制御の故障、またはCRTそのものが不良といったように問題の切り分けもより早く叶ったと思います。

ドライブ回路といってもブラウン管の加速電圧ほどの電圧ではありませんので測定に怖気づく必要はありません。
ただこの手のブラウン管は本機もそうですが偏向板の端子が首の途中に細いピンで出ているものが多く、扱いを間違えてピンを折ってしまうと、もう完全にオシャカとなってしまします。
言い訳になりますが、今回は少々ナメた気持でワークスペースを確保しないまま、事務用机の上で作業を始めてしまいました。検査用のオシロはプローブケーブルがなんとか届く距離の床の上。プローブの取り回しに若干苛立ちながらの作業でした。

ちなみに本機のCRTの加速電圧(アノード電圧)は8KVということです。
パワー的にはプロフィール(ソニー製ブラウン管テレビの名機?)より全然低いものの、触りたくない電圧です。
