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ADVANTESTのタクトスイッチ リペア

advantest_switch.jpg

このところは先月末に到着したネットーワークアナライザ(ジャン測)が良い気晴らしになっています。
ADVANTESTのR4611、80年代後半産まれ。
他社ですが計測器メーカーに勤務する友人(今は管理職となり毎日がつまらなそう)に話をしても
「あの世代の物は結構頑丈だからね。まだしばらくは使えるんでないかい・・・」
というお言葉と、「あはは、多分汚らしいだろうけど、、、趣味で使う分にはイイよネ!」。

確かに。
FDDやCRTを囲うプラスチックのエスカッションは日焼けでまっ黄色。
後部ファンのエアフローが吸出しの為、パネルとスイッチの隙間には吸い込まれた塵が真っ黒に積もっています。
まあ、日焼けは年代物の証し、塵は拭き取るなり洗うなりするとして、、、、。

R4611_switch_board_01.jpg

想定内ではありましたがスイッチに問題。
当時のアドバンテスト(タケダ理研)の機械にありがちなプッシュスイッチ(タクトスイッチ)不良です。
幾つかが押しても反応しません。数個は押下感がゼロでボタンがフラフラ、、、、。

この部分はカウンタなど小型の物からローカル(友人)購入のTR4171,TR4713,自分のTR4172(現存),TR4511(売却),,,,誰かが買う度に直している気がします。
まあ、古い機械なので部品を責めるのは酷です。今回も文句を言わずに対策を取る事にしましょう。

8mm角、ロングステム、ラバー接点。
数年前、オークションで知り合ったM田様という方(MS-420のマニュアルの謝礼に高級同軸をたっぷり頂いてしまいました)から、”数をまとめれば注文できますよ(@アルプス)”という情報を頂いたのを覚えています。
しかし今現在ではディスコンとなり発注不可・入手が難しい品物です。

さて、どうしましょう?。
実は半田ゴテさえ不要、交換せずとも機能を回復させる手があります。

正直、アップすべきかちょっと悩みました。軽くネット検索もしたところ、やはりご苦労されている方がいらっしゃるようなので、責任は一切持てませんが以下に私流のリペア方法を記します。

※スイッチの抵抗値を計り、ON抵抗が0Ωに近い値では無いからとNG判定しては勿体無いです。

後述しますがクリック感が完全に喪失しボタンが上がらない物は交換、あるいは一部の部品が必要です。
それ以外であれば綿棒、無水アルコール、水道水、、、程度を準備すればそれなりに復活します。

まずキートップの有無を問わない状態でアクチュエーター(ステムと一体のグレー部品)をハウジングから外します。

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ステムの片側を引き起こします。上から見た向きを90度間違えるとハウジング(黒い部品)を壊しますので要注意。
赤円で示した、組み付け時に開キを与える為のスリットで向きを確認してください。

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片側が起きれば、反対側はスリットを精密ドライバーなどで少しだけ開いてやればアクチュエーターが外せます。
乱暴に行うと嫌な音がしてハウジングにヒビが入ったり、最悪の場合アクチュエーターを止めている部分が欠けます。
(ADVANTESTの機械に限ってはキートップのツバがパネル内側に当たるのでアクチュエーターが外れやすくなっても殆ど問題ありませんが、そもそもアマチュア的なリペアですので不安を感じる場合はチャレンジせず、良品中古あるいは新品部品に交換を。)

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ハウジングに収められているラバーコンタクトをピンセットで外します。

大抵のケースではコレだけを新品に換えれば、ハウジング側はクリーニングで事足ります。
以前は秋葉原でも同型スイッチのショートステムが手に入り、それを購入しバラして使った事もありました。
(曖昧な記憶ですが、同形状でも色によってクリックの重さが違ったような。)
しかし今はそれさえ入手は難しい、、、。

ということで、破損がなければ再利用します。

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タッチ(クリック感)が悪いのはカビや汚れでラバーが必要以上にハウジングに密着している事が多いようです。現在まで100個以上バラしましたが、ラバーの弾性が大幅に経年劣化している物には当たりませんでした。
(切れてしまっている物は結構アリ)

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コレをクリーニングします。
内部には導電樹脂がありますので溶剤や強烈な洗剤の使用は避けるべきでしょう。私は数十秒程度無水アルコールに浸した後、半日以上乾燥させています(5年位前に作業した物がまだ活きていますのでアルコールは大丈夫だと思います)。
またその際、固めの綿棒で導電部分のアルコールを拭うように軽く擦ります。

advantest_switch_repair_06.jpg

ハウジング側もアルコールを浸した綿棒でラバーコンタクトが収まる壁と接点を清掃します。
導通の悪い物はハウジング側の接点(金属)がカーボンで汚れていたり、ラバーコンタクトのカスのようなもので黒くなっているはずです。
また、タッチの悪い物ほどハウジング壁面の汚れを感じます。

※オイルや接点復活剤は使用しない方が賢明でしょう。

さて、アクチュエーター&キートップは適当な洗剤で洗い、これも十分に乾燥。
後は再びラバーコンタクトをハウジングに正しく収め(セット後、コンタクトの頭を綿棒で垂直に押しクリック感がある事を確認)、アクチュエーターをペコリとセットすれば完了です。

同年代のHP機(HPは多くが独特なメカ接点)のクリック感と比べると、ちょっと頼りない感じはしますが導通はもちろん、タッチも改善された印象を受けると、、、思います(多分)。



advantest_switch_repair_07.jpg

これは切れてしまっているコンタクトです。
こうなると操作は可能でもクリック感はゼロとなります。
ジャンクあるいは新品の代品が無い場合、使わないスイッチを探しそこに割り当てるか、そこはコンタクト無で組み直すしかありません。




advantest_switch_repair_08a.jpg

この機会にちょっと復習しておきましょう。

ラバーコンタクト(ゴム接点)のスイッチです。
通常数百~数KΩのON抵抗はあって当然。チャタリングはありますが金属接点(メカ接点)のような大振幅にはならず抵抗値を持って振れる特性はロジック回路において都合良い部分でもあります。
(ソフトウエアでチャタリングキャンセルする場合、厳密にはラバー接点とメカ接点では対策が異なるはず)。

今回のR4611ではスイッチ周辺のロジックICはC-MOSが使われており、入力側は33KΩでプルダウンされていました。
”H”レベルのスキャン信号が来た時、スイッチONでこれが入力に結ばれ、"H"が通れば良いわけです。
スイッチのON抵抗が0Ωに近い必要は無く、”H”レベル≒VDD/閾値が1/2 VDD(C-MOSの場合)ならプルダウン抵抗にほんの少しだけ勝てれば(抵抗値が低ければ)スキャン信号の”H”を入力に通すことが叶います。


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Author:Dellbee
デルビィです(少年時代にハマったアマチュア無線局のコールサインを捩りました)。
子供の頃から電子電気・機械物弄りが好きで、今も自分の時間が取れた時は何か弄っています。

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